飛騨古川 雪またじの屋根 / A roof for snow shoveling in Hida-furukawa

所在地:岐阜県飛騨市
主要用途:専用住宅
設計:2019.10 竣工
敷地面積:282.99 m²
建築面積:171.76 m²
延床面積:261.30m²
規模:地上2階
主体構造:木造

Location: Hida-city, Gifu, Japan 
Function: House
Design: 2019.10 completion
Site Area: 282.99 m²
Building Area: 171.76 m²
Total Floor Area: 261.30 m²
Stories: 2
Structure: Wooden

雪との共生と地域資源の循環
 日本有数の豪雪地帯である飛騨地方における冬の風物詩「雪またじ(雪かきの方言)」に着目し,雪国における冬の暮らし方について再考した.この街では,地下水汲み上げによる消雪設備が主要道路に沿って埋め込まれており,降雪時には昼夜問わず散水される.道路脇の大きな用水路は,雪を随時放り込むためのものである.また,秋になると屋根にハシゴを固定し冬に備える家屋が散見される.この地域では越冬のため,美しくも厳しい「雪との共生」は暮らしの重要なキーワードである.
 建主の要望のひとつに屋根の雪またじが容易なことがあった.そこで,屋根の雪を前面道路にスムーズに排出できるよう,敷地いっぱいに積雪荷重1.0mの片流れ屋根を架けた.また,遮熱効果の高さ故に,東南アジア・アフリカなどの熱帯気候における建築などにしばしば用いられる二重屋根構造を採用することで,夏季は木陰のように快適で,冬季は屋根の凍害防止や防水ラインの複層化による長寿命化を意図した.
 建て直し前の旧家西側は,隣家と接していたため光や風が届きにくく,暗くて鬱蒼としていた.対照的に,敷地の東隣は地域の祭に使用される屋台蔵と5広場で,将来に渡り何も建たないことが予想されるため,必要居室を東側に寄せ,西側を吹抜けとした.それにより,光が差し込み,風が通り抜ける開放的な半屋外とした.延床面積の約半分を占めるこの土間・テラススペースは家族の憩いの場であり,何より子ども達の恰好の遊び場となった. この住宅の内外装には,私が事務局として参画する自然エネルギーNPO「活エネルギーアカデミー」で間伐した地場材を製材加工したものを使用している.グローバル経済の発展と共に日本の林業は衰退し,手入れされず放置された山々は土砂災害・獣害・花粉飛散量の増大などを引き起こす原因となっている.私たちが活動の拠点とする岐阜県高山市は,日本一大きな面積を有する市だが,その92%を森林が占め,放置林が無数に存在する.その一方で9万人弱の人口ながら灯油の年間使用量は24億円にも上り,地域資源のエネルギー活用は喫緊の課題である.間伐材の多くは木質燃料として利用されることが多いが,中には立派なものも沢山ある.今回,それらを建材として利用することで材の付加価値を高め,それが放置林の価値を高め,人が山に入りたくなる状況をつくるために,間伐材の新たな活用ルートを開拓する試みとしている.

・JIA東海住宅建築賞2021 受賞

・新建築住宅特集 2020:02 掲載

(photo: Shinkenchiku-sha, Yuji Nishijima, SAWADEE)

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